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mRNAデリバリーの未来:吸入を介した細胞内デリバリー強化のための脂質ナノ粒子工学の進歩

ホワイトペーパー: 遺伝子編集療法のデリバリーのための脂質技術

メッセンジャーRNA(mRNA)は、最近のワクチン開発において決定的な役割を果たしており、まさに現在の医学研究の最前線にあります。従来、脂質ナノ粒子(LNP)を介してmRNAを全身にデリバリーする場合、LNPが生得的に肝臓に蓄積するため、他の臓器へのデリバリーが制限されていました。新たな投与経路を通して他の臓器へmRNAをデリバリーするためにLNPを標的化する能力は、肺疾患治療に向けた肺上皮への吸入デリバリーなど、新たな治療用途への扉を開きます。このブログでは、LNPを介したmRNAの吸入デリバリーに関する最近の進展を検証し、それらが将来の肺疾患治療にどのような影響を及ぼし得るかについて検討します。

吸入mRNAデリバリーの課題

ACS Nano誌に掲載された最近の論文では、LNPを用いたmRNAの吸入デリバリーに関する3つの主要な課題が指摘されています1。ネブライザーは非常に大きな力を生じるため、ナノ粒子とmRNAの結合性が失われるおそれがあります2。LNPは気道粘液によって肺上皮への到達を妨げられることがあります3。mRNAがエンドソームから脱出できなければ、バイオアベイラビリティの問題につながります。これらの問題は解決できないのでしょうか?全くそうではありません!オレゴン州立大学の研究者たちが、このような制限を克服するLNP処方をどのように開発し、mRNAの肺へのデリバリーに成功したかについて説明いたします。

吸入デリバリーのための脂質ナノ粒子の作成

従来のLNPは、イオン化脂質、PEG脂質、リン脂質、コレステロールを含む4つの脂質成分で構成されています。それぞれが、mRNAをデリバリーするLNPにおいて独特の役割を果たしています。多くのデリバリーシステムでイオン化脂質の特性に焦点が当てられているのに対し、吸入デリバリーはPEG脂質とコレステロールに焦点を当てています。噴霧による吸入デリバリーには、エンドソームからのLNPの適切な脱出と同時に、プロセスの強い力に耐える十分な粒子の安定化が必要です。このことを念頭に置いて、オレゴン州立大学の研究者たちは、粒子安定化の主要な原動力であるPEG脂質成分と、エンドソームからの脱出に重要な役割を果たすことが発見されたコレステロールに注目しました。この目的のため、研究者らは、いくつものLNP処方を検討し、mRNAの噴霧とエンドソームから肺上皮への脱出を可能にする組み合わせを突き止めました。

LNP処方におけるPEGの濃度とβ-シトステロールの役割

一連のin vitroおよびin vivo実験を通して、研究者らは、PEG濃度を調節し、コレステロールの代わりにβ-シトステロールを使用することで、噴霧によるmRNAの肺へのデリバリーが成功することを発見しました。PEG濃度を上げると、噴霧用のLNPはより安定で小さくなり、粒子はプロセスのせん断応力に耐えることができます。一方で、濃度が5.5%を超えると、mRNAのカプセル被包効率と導入率に影響が出ました。このように、バランスは微妙です。

コレステロールをβ-シトステロールで置換すると、LNPのエンドソームからの脱出率が向上するため、mRNAの導入効率が200%向上することが以告されています。この先行研究を基に、OSUの研究チームは、コレステロールの代わりにβ-シトステロールを用い、この置換が高濃度PEG粒子の導入率の低下を補えるかどうかを評価しました。実際、in vitroおよびin vivoのデータから、シトステロールを含むLNPは高い導入効率を示し、噴霧中のせん断応力にも強く、噴霧されたLNPの吸入を介してmRNAが肺にデリバリーされることが明らかになりました。

吸入可能なmRNA療法の可能性

吸入可能なmRNA療法は、呼吸器疾患の治療法を変革する可能性があります。肺がん、肺動脈性肺高血圧症、嚢胞性線維症は、この製剤が使用される可能性の疾患のほんの一部です。例えば、吸入可能なmRNA療法によって、CFTR遺伝子の機能するコピーを肺に送り、嚢胞性線維症の原因となる遺伝子欠陥を逆転させることができるかもしれません。

吸入可能な肺動脈性肺高血圧症用のmRNA療法は、動脈を緩めるタンパク質を供給し、肺への血流を増加させると考えられます。肺がん用の吸入可能なmRNA療法は、がん細胞を攻撃する免疫系を促すタンパク質をもたらす可能性があります。

まとめ

LNPを吸入デリバリーするための処方は、他の投与経路とは異なります。今回発表された研究によって、多くの疾病におけるLNP技術の進展に一歩近づきました。吸入可能なmRNA療法は呼吸器疾患の治療に革命を起こす可能性があります。

デリバリーにイノベーションが起こる中、Avantiは、さまざまなPEG脂質やβ-シトステロールなど、お客様のプロジェクトを成功に導く脂質の供給を致します。吸入デリバリーへの取り組みにクローダの製剤設計と脂質合成の専門家チームは、ともに革新し、課題に真正面から取り組みます。

1,2,3 https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acsnano.2c05647

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クローダは、ワクチンや次世代医薬品に使用されるmRNAに関連した安定性とデリバリーの問題を解決するために、比類のない純度の脂質を開発・製造しています。

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